堺市文化館 アルフォンス・ミュシャ館

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2020/03/17 (火) 特集

観どころ、聴きどころ♪『ベルリン・フィル八重奏団』(2020/5/21)

ベルリン・フィル八重奏団
旬のメンバーが贈る最高峰のエッセンス
~樫本大進、エスコ・ライネに聞く~ 聞き手:柴田克彦(音楽ライター)

ベルリン・フィル八重奏団は、同楽団の室内アンサンブルの中で最も長い歴史を持つグループ。
2013年にはメンバーの半数が交代し、コンサートマスターの樫本大進も加わった。
そこで今回、まずは彼に同グループの特徴を聞いた。


樫本「ベルリン・フィルの良さを出す、その小バージョンという感覚です。ただし、オーケストラは指揮者が方向性を決めますが、八重奏団は各々が指揮者の役割を担っていますので、話し合いながらまとめる作業が生じます。とはいえ全員同じオケで演奏していますから、共通のベースの上で新しいアイディアを探ることができる。そこがとても面白いですね」


もう1人話を聞いたのが首席コントラバス奏者のエスコ・ライネ。
1998年から参加している彼は、「現在のグループは前よりずっと良い」と断言する。


ライネ「1人の時にこうと決めても、皆が集まると全く新しいアイディアが出てくるので、常に新鮮な状態を保つことができます。特に今のメンバーは常に向上心を持っていますし、多様性に富んでいて何が起きるか分からない。出てくるものが毎回違うので楽しいですね」



同グループのトレードマークであり、今年の日本ツアーでも演奏されるのがシューベルトの八重奏曲。
現メンバーも2017年に録音し、ステージともども濃密な名演を展開している。


樫本「グループのDNAにある曲ですが、メンバーの個性が反映されますので、今は我々独自のものができていると思います。作品自体は、各楽器の魅力を引き出していて、1人1人が輝ける場所が確実にある曲ですね」

ライネ「スケールが大きく、各楽章の性格が全く違う作品。この曲も今のメンバーになってどんどん良くなっています。昔はffが多かったのですが、今はppを大切にしていますし、現メンバーはチャレンジングなので、弾き終わってすぐにまたやりたいという気持ちになります」

今ツアーは、細川俊夫の委嘱新作も目玉の1つ。
さらには後期ロマン派の作曲家フーゴ・カウンの八重奏曲というレア作品も披露される。


樫本「細川さんの音楽はカラフルで柔らかく、フランス的な面も和のテイストもあって、色々なイメージができます。ベルリン・フィルと親しい作曲家で、メンバーのこともよくご存知なので、皆の長所を引き出すような曲を書いてくれるのではないかと、すごく期待しています。フーゴ・カウンの作品は、僕が発見してすごい曲だと思いました。ロマンティックで素敵な単一楽章作品で、ベルリンの作曲家という繋がりもあります」

今ツアーの演目は全て八重奏曲。
これは同グループの活動歴が20年を超えるライネも「初めて」とのこと。
樫本も「せっかくの八重奏団なので八重奏曲だけのプログラムをずっとやりたかった。それがようやく実現できます」と語る念願の公演だ。

両者共に「仲の良いメンバーが楽しんでいるのが音楽に表れ、それが聴衆にも伝わると思います」と語る本公演。
愉悦感に溢れた最高級の演奏をぜひ体感したい。

写真 ⓒKeita Osada (Ossa Mondo A&D)