この度、2023年度の競輪の補助を受けて、以下の事業を完了いたしました。
【事業名】
2023年度 児童、高齢者、障がいのある人等が相補的に関わることのできる
地域共生型社会づくりを促進する活動、調査・研究等補助事業
【補助金額】
1,077,450円
(1)事業の目的
本採択事業は、令和4年度採択事業に引き続き、「多様な背景の子どもが集まり、様々な資源を持つ大人が関わることで子どもの課題を始めいくつもの社会的課題にアプローチできる」という子ども食堂の持つ社会的な機能について、文化芸術ワークショップを通してそれを高めることを目的としつつ、そうしたワークショップが将来的に子ども食堂自身によって企画・運営されていくための事業モデルの創出及び支援体制の構築を目指したものである。
(2)実施内容
いづはまスマイル食堂
音楽家・ワークショップリーダー:古橋果林氏による音楽ワークショップを継続的に実施した。本年度のワークショップでは、即興をテーマとして、子どもたちの自主性を引き出し、また子どもを中心に親や地域の大人が関わることを通して、子ども食堂を中心としたゆるやかなコミュニティが形成されることを目標とした。なおアシスタントとして、採択者が運営する堺市新進アーティストバンクに登録する若手音楽家が参加した(ピアノ:竹村七音氏、フルート:伴菜生氏、ユーフォニアム:岩本未貴氏)。
にしのこ☺まんぷく食堂
漂着ごみを使って立体造形作品を制作する美術家:淀川テクニック(柴田英昭氏)によるワークショップ「ゴミジナル工作®」を実施した。材料には、柴田氏が各地で収集したごみに加え、食堂が属する地域で収集された不法投棄ごみを一部活用した。作品は地域の各施設(病院、福祉施設、小学校、保育園、就労支援協会等)、公園、歩道橋デッキ部に展示された。また実施最終日には作品を施設に集め、鑑賞会を実施した。子どもの制作や展示に大人も関わることで、両者が交流する時間を作り、関係性が深まることを目標とした。
PROJETO CONSTRUIR KODOMOSHOKUDOU
ブラジルにルーツを持つ子どもとその家族が集まるこの食堂では俳優の大熊ねこ氏がアシスタント2名と共に、演劇的手法を活用したコミュニケーションワークショップを実施した。表現することを軸に、子どもたちが自分にできることを自ら広げていく実感が得られるような場となることを目標とした。
本採択事業では、令和4年度採択事業と同様に、子ども食堂における芸術ワークショップの実施について成果検証をするための委託調査を実施した。受託事業者である合同会社文化コモンズ研究所は、令和4年度採択事業で調査を委託したNPO法人アートNPOリンク理事長/調査代表者の大澤寅雄氏が立ち上げた、文化芸術事業の成果検証調査を専門とする独立系シンクタンクである。
検証方針についての打合せを経て、以下3点を実施した。
[1]各食堂共通項目のアンケート調査による基礎データ把握
[2]各食堂での事業において、年度途中の実施に調査員が訪問することによる、事業経過のモニタリング評価
[3]全事業終了後における、食堂実践者・アーティストへのグループインタビュー
これらにより本調査では、事業の結果(アウトプット)、成果(アウトカム)、波及効果(インパクト)を総括することを目的とした。
R5年度「子ども食堂における芸術家派遣事業」事業検証調査報告書
調査委託:合同会社文化コモンズ研究所
(1)堺市内の子ども食堂について
本採択事業が実施した、特性の異なる3食堂それぞれにおける芸術ワークショップの内容及び成果は、今後、堺市内外で活動する他の子ども食堂が自らそうした活動を開始する際に参考となるモデルと位置付けられる。他方で同じく本採択事業で、堺市社協と連携して設計したアーティスト派遣制度は、漠然と興味はあるが具体的に何に取り組めばよいか分からない子ども食堂に対して、まずはアーティストを招聘してイベントを実施するという経験ができる仕組みとなっており、実際に想定されるのは気軽なコンサートや体験活動である。この制度の下で一度アーティストとの協働を経験した子ども食堂が、次の段階で、より食堂自身の特性を活かした芸術ワークショップについて、3食堂のモデルを参考としながら検討することが可能となる。また現在、当該アーティスト派遣制度の運営に当たっては採択者自己資金に限らない多様な原資を確保できるさなかにある。このように、子ども食堂自身が自ら実践したいことを企画し、それを様々な原資で支える仕組は、将来的な事業の普及に少なからず貢献できると見込まれる。
(2)アーティストについて
昨年度同様、本採択事業における芸術ワークショップはアーティストにとって素朴な社会貢献事業、奉仕活動ではなく、子どもたちと共に創作し、場をつくる芸術活動であり表現活動であるとすることで、アーティストの内発的動機付けに基づく創造的な協力を得られたことは意義深い。本採択事業が普及・展開するためには、アーティストにとっても芸術的な側面から関わる意味や動機が語られる必要があり、本採択事業期間ではアーティストとの緊密なやり取りによって当該部分を数多く言語化できた。いつの時代もアーティストは社会の要請に応え続けてきたと言えるが、仮に子ども食堂において多様な子どもの在り方を認める場づくりを推進するのであれば、そうした取り組みにおけるアーティストもまた、ただ動員されるだけでなく「アーティストとして」関わることができる状況を準備することが公正である。そうした関わり方を発信することでこそ、本採択事業に対する協力アーティストを拡げることができるのであり、本採択事業はその可能性をつかむことができたと言ってよい。